17日目 歯医者
ここ最近通っている歯医者、僕以外の患者を見たことがない
受付後すぐ診療スペースへ移動、治療が終わりすぐに会計、次回の予約を済まし帰る、その間ただの1人にも会ったことがない
あまりに遭遇しないので
僕だけのためにある、僕にしか見えない、いや、僕だけが迷い込んでいるのではみたいな気持ちになってくる
もはや夢なのでは
しかし着実に虫歯は減り、気持ちも上向き、体調も良くなっている
空想の中の怪しげな闇医者どころか実在する名医という印象である
名医とまで言うのは初回の治療があまりに明快であった為で
その時の僕は口内炎が治らず、痛み、遂には口が開きにくくなり食事もままならなくなっており
「なにか悪い菌でも入ったのではないか」といった不安を抱えていた
とにかくすぐ近くの歯医者へ、と入ったビルの2階
例によって受付後すぐ診療スペースへ
「原因は親不知である、すぐに抜いてみせよう!」といった具合で、あっという間に問題の歯を抜き去り、会計、そして次回予約。
痛みもなく、不安も消え去り、今ではこんなに大きなおにぎりを食べられるようになりました!
ありがとう!医者様!大先生!万々歳!
自分のよく知らない分野における自分の予測とは全く異なる、考えもしなかった原因を素早く明示し、確かな技術を持ってそれを除去なんてされてしまった日には、もうそのお方を敬うことしかできないでしょう!
かくして実在する名医となったのでありました
とはいえまだ空想の中の存在である可能性も捨てきれない
もし僕にしか見えない僕の為だけの歯医者であるとすれば少し気になる点がある
診療スペースには席が3つあるのです
つまり3人の患者を同時に診療できる
僕にしか見えないのであれば席は1つで事足りるはずであり、演出にしてはお金がかかり過ぎている
あのリクライニング自在、水の補充自在のシートは一台うん百万とかかるでしょう
ともすれば両側に鏡が?横に目をやると僕自身と目が合うなんということもなかったのでそれは違う
では非常に精巧な絵であると考えるべきかもしれない
今のところ、僕はその絵と現実の継ぎ目を確認することができていないので、低予算での演出は成功しているといえるでしょう。そのクオリティ、本当に低予算なのかという話にもなりそうですが
次回診察時に手を伸ばして確認してみようかとも思いましたが、そんなことで名医の診療を邪魔することは決してあってはならない
長々と空想上の話を前に進めていましたが実在するのです
証拠として次回予約の際いただいたメモを載せておきます
あ、でもこれが僕の手書きで自作自演だという可能性もある
そのレベルにまでなっているとすれば、もう違う病院に通う必要ありますね
果たしてそこでは他の患者に会うことはできるのでしょうか、おやすみなさい